writer : techinsight

【名盤クロニクル】ロイ・ヘインズ「アウト・オブ・ジ・アフタヌーン」

(画像提供:AMazon.co.jp)

(ジャンル:ジャズ)
この連載では、あらゆるジャンルの名盤を紹介しているが、ジャズの名盤を紹介するときには、(1)定番ではなく(2)初心者にも馴染みやすく(3)通な人からも一目置かれているというアルバムをチョイスすることにしている。そのため市販のジャズ名盤本とは趣が異なっていることをお知らせしたい。
今回紹介するのは、ジャズ喫茶で非常に愛された名盤である、ロイ・ヘインズの「アウト・オブ・ジ・アフタヌーン」である。

このアルバムが人気なのは、日本人好みのマイナーチューンが多く収録されていることと、メンバー構成が絶妙であることだ。
サックスのローランド・カークは一度に複数のサックスを加えて吹くちょっとした変人で、ベースのヘンリー・グライムスもちょっとトンガった人である。これに対してリーダーのロイ・ヘインズは堅実なドラマー、そして居るだけで演奏に味が出ると言われる名脇役ピアニストのトミー・フラナガンという構成である。

収録曲は、オリジナル曲が大半を占めているので新鮮であるが、1曲だけ当時(1962年録音)のブームを反映してボサノヴァの名曲「フライ・ミー・トゥー・ザ・ムーン」が入っている。
ただし、よくありがちなぎこちないボサノヴァではもなく、ワルツテンポの骨太なジャズナンバーに仕上げているのも好感度が高い。

ジャズ名盤においては、リーダーの名義と実際のスタープレイヤーが異なることがしばしばあるが、このアルバムはローランド・カークの見た目が変人な割には、普通でカッコイイ演奏をするというのを堪能するのが正しい聴き方と言えるだろう。

もし、ジャズ初心者の方が、一家言ありそうなジャズファンの怖いオジサンとお話をする機会があったら、愛聴盤としてこのアルバムを持ち出してみるとよいだろう。おそらく一目置かれるに違いないが、場合によっては誰も知らないようなわけのわからない超マイナーなアルバムを紹介されるかもしれないので、注意が必要でもある。

(収録曲)
1. ムーン・レイ
2. フライ・ミー・トゥ・ザ・ムーン
3. ラウール
4. スナップ・クラックル
5. イフ・アイ・シュッド・ルーズ・ユー
6. ロング・ウォーフ
7. サム・アザー・スプリング
(TechinsightJapan編集部 真田裕一)