writer : techinsight

【名盤クロニクル】スティング「ナッシング・ライク・ザ・サン」

(画像提供:Amazon.co.jp)

近年は「大人のロック」なるジャンルが宣伝されているが、それらはもともと70年代にガキの聴くやかましい音楽であったロックを聴いていたキッズが、オヤジになっても変わらず聴いているという音楽であって、オヤジロックと呼ぶのが正しい。
しかしながら、真の意味で大人向けのロックを聴かせるミュージシャンは、ちゃんといるもので、そのひとりがスティングである。今回は彼の人気盤「ナッシング・ライク・ザ・サン」を紹介したい。

スティングがなぜ大人のロックと呼べるのかについては、まずジャズやソウルといった歴史のある音楽との接点を持っていることと、実際にその筋の名ミュージシャンを起用したアルバム造りをしている点である。

そして、スティング本人の哀愁のある声質が、この上もない上質感を漂わせている。

そうした彼の魅力が最大限に発揮された名作が、この「ナッシング・ライク・ザ・サン」である。

後年、ジャズシンガーやクラシックアーティストによって多くカバーされることになる名曲「イングリッシュ・マン・イン・ニューヨーク」と「フラジャイル」が収録されていることが大きい。
エリック・クラプトン、マーク・ノップラー、ギル・エヴァンス、ブランフォード・マルサリスなど、ゲスト陣も豪華である。

なお、スティングはライブも面白い。というのもCDと同じ演奏をあまりしないからだ。コンサートのたびに微妙にアレンジを変えたり、違った趣向で聴かせることが多いので、一つの曲が何倍にも楽しめる。

スティングは近年、ダウランドなどのイギリス古典曲に取り組んでおり、ファンもいささか戸惑っているようだが、良い意味でファンを裏切り続けるのは、先鋭的であることの証左である。これからの活動にますます期待がかかるところだ。

(収録曲)
1. Lazarus Heart
2. Be Still My Beating Heart
3. Englishman in New York
4. History Will Teach Us Nothing
5. They Dance Alone (Cueca Solo)
6. Fragile
7. We’ll Be Together
8. Straight to My Heart
9. Rock Steady
10. Sister Moon
11. Little Wing
12. Secret Marriage
(TechinsightJapan編集部 真田裕一)