IT関係の報道を見ると、「クラウド」の文字を見ない日はないが、果たして「クラウド」とはなんであろうか。定義の仕方は様々であるが、要するに一昔前のiDC(インターネット・データセンター)が、主としてソフトウェアの利用形態に関して装いも新たに売り出されている旬の技術である。ビジネスモデル自体はIT業界が古くから培ってきたものなので、ユーザー企業がやるべきことは自社のIT資産を棚卸しして、インターネット経由のSaaS形態に移行するか、アプリケーションの実装はそのままでプラットフォームをWeb化するか、従来通りに自社運用するかなど、利用と所有の切り分けを最適化することが導入成功の要因である。安易にクラウド化という言葉に踊らされると、失敗に終わる可能性が高いだろう。
そんな中、日本の代表的なITベンダーのひとつであるNTTデータが、クラウドサービス「BizCloud」を2010年4月に立ち上げることとなった。
BizCloudプラットフォームサービスはBizCloudソリューション体系の中核であり、エンタープライズ向けプラットフォームサービスとして、顧客がクラウド環境の導入・運営を低リスク・スピーディーに取り組むための機能やインフラをサービス提供する。
日本電信電話株式会社およびNTTコミュニケーションズ株式会社とともに共同開発したSaaS共通基盤機能群をはじめ、NTTデータグループのクラウドソリューションを統合するなど、最新のクラウド関連技術を取り入れている。
BizCloudプラットフォームサービスは、日本国内の高信頼なデータセンタで運営されます。エンタープライズクラウド構築・運営に必要な機能群やインフラを事前に準備し、従量課金で提供する。もちろん、スケールアウトも柔軟に対応可能なPaaSとしてスピーディーに提供する。
BizCloudプラットフォームサービスは、仮想化したマシン環境だけでなく、コミュニケーションツールや営業・顧客管理といったフロントオフィス機能を構築するコンポーネントや、販売管理・会計管理といったバックオフィス機能を構築するコンポーネントを提供する。
クラウドには、プライベートクラウドとコミュニティクラウドの2種類がある。プライベートクラウドとは、クラウドコンピューティング技術を活用し、社内システムを共有するITの利用形態。個別機関毎に構築するため、細かな要求仕様にも適合可能という特長がある。自社設備を利用して構築する形態(オンプレミス)、設備を社外リソースに頼りながらプライベートクラウドを構築する形態の両方がある。
コミュニティクラウドとは、共同センターといった形式で、特定企業間などで共同利用されるクラウドであり、ある程度の仕様柔軟性とコスト削減効果が期待できる。
クラウド化を成功させる要因は、技術や設備の問題よりも、個々のシステムの継続運用をどうするかというポリシーの問題である。
オフィスの片隅で今でもひそかに動いているオフコンシステムやスタンドアロン・ワークステーションのようなレガシーシステムを、それらに蓄えられたノウハウと伝統を継承しながら、あるものは完全なパッケージ型システムに移行し、あるものはインタフェースを継承したままWebに移行したり、場合によっては一切手を加えないで自社保有のサーバで運用するなど、従業員の再教育費用やヘルプデスクの運用なども考慮して、コスト最適化を図りながら、「なるべく無難に」最新環境に移行することが重要である。
(TechinsightJapan編集部 真田裕一)