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(ジャンル:ジャズ)
オーネット・コールマンの音楽は、ジャズファンにとって一種の踏み絵である。いわゆるフリージャズの開祖と言われているが、後年知られるようになった集団即興としてのフリージャズではなく、それでいて伝統的な奏法からは完全に逸脱している独自の奏法は、60年代のジャズファンにとって強い拒否反応を示させるものであった。
70年代以降はエレクトリックジャズをも積極導入し、これでますます保守的なジャズファンからは嫌われることになった。
日本では、ジャズ喫茶という音楽喫茶がジャズシーンに強い影響力を持っていたが、そのジャズ喫茶自体が、オーネットの音楽を毛嫌いしていた面もある。
さて、この1976年のアルバム「Dancing in your head」は、異教の祝祭にも似た循環するメロディが延々続く作品だ。難しい話をすれば、メンバー全員が各々思い思いの音を勝手に出して音楽に仕立て上げる「ハーモロディクス理論」を採用した音楽だが、保守的なジャズファンの、フリージャズ嫌い、エレクトリックサウンド嫌いが災いして、いまだに賛否両論の中にあるアルバムである。
しかし、このアルバム、実は難しいところは何一つない。狂熱のビートとデタラメ寸前のフレージングにどっぷりひたって踊り狂えばよいのである。
むしろ、ジャズ喫茶文化もジャズ理論も何も関係ねぇよという若い世代に支持されるタイプの音楽だ。マイルス・デイビスの「オン・ザ・コーナー」が、若い世代に圧倒的に支持されているのと同じである。
現在、50代以上の人たちは、「歴史には運動法則があって、我々は正しい道を歩まねばならない」という幻想を持っていることが多いが、そういう発想が全くない後の世代には何のこだわりもなく聞き続けられていくであろう名盤である。
(TechinsightJapan編集部 真田裕一)