アラバスタの一件を片付け「ゴーイングメリー号」で出航する「モンキー・D・ルフィ」一行。ところが船上には敵であるはずの「ニコ・ロビン」の姿が。仲間にしてほしいという申し出にルフィ以外のメンバーが戸惑っていると、突如「記録指針(ログポース)」が異変を起こした。針が上を向いて動かなくなってしまったのだ。
ロビンが言うには、『“空島”に“記録(ログ)”を奪われた』とのこと。空に浮かぶ海、に浮かぶ島。俄然興味を抱いたルフィは、次なる目標を空島に定める。
山の次は空である。天使がいて、神がいて、黄金郷があり、ジャックの豆の木まである空島。なんともでたらめで、ごちゃまぜのアドベンチャー・ワールドでくり広げられるのは、バトルに次ぐバトル。神、神官、戦士にルフィらが入り乱れてのサバイバルである。
ルフィはゴム人間という特徴を遺憾なく発揮して戦う。「ゴムゴムの銃」「ゴムゴムのバズーカ」などの技はルフィならではのものであり、手足が伸びることで生まれる躍動感は従来のバトルシーンにはないものだ。一方、王道の戦いも剣士「ロロノア・ゾロ」により楽しめるので安心してほしい。3本の刀が乱れ飛び、ばったばったと敵を切り倒すさまは爽快の一言である。
その後の“ウォーターセブン”編で仲間に加わる船大工「フランキー」の戦い方は、“改造人間(サイボーグ)”ということもありまるでロボさながら。そんな彼らがさまざまな能力者と戦うバトルシーンは、他漫画では見られないほどバリエーションに飛んでいる。
この作品は戦闘の場面は多いが、死人が出ることはほとんどない。ルフィが敵を殺さないからだ。このことについて作者である尾田栄一郎氏は、ルフィは戦闘において敵の信念を砕いており、それが死に匹敵する痛みとなる、としている。命ではなく心をやり取りする戦いというわけだ。
物語中盤以降は航海士「ナミ」、船医「トニートニー・チョッパー」など本来なら非戦闘員ともいえるメンバーまでもが積極的に戦いに身を投じている。好みによるかもしれないが、ルフィらの超人的バトルよりもこちらの方が胸を打たれるかもしれない。たとえ弱くても自分にできることをする、自分にしかできないことがある、直接助け合うだけが仲間ではないのだと思い知らされるのだ。
作品全編を通して描かれているのが仲間との絆。“スリラーバーク”編では新たに音楽家「ブルック」を加え、ますます絆を強めていく。2009年11月現在最新刊であるコミックス55巻では、麦わら一味はとある事情で離れ離れになってしまっている。しかしルフィは仲間を取り戻すために、かつての敵と新たな絆を得て邁進中だ。
ルフィの冒険はまだまだ、まだまだ続きそうである。今からでも遅くはない、機会があればぜひ、大人にこそ読んでもらいたい。子どもだけのものにしておくのはもったいない良作である。
そうそう、コミックスの大人買いをするならついでに新品のボックスティッシュも入手しよう。泣けるシーンが随所にあるので、準備万端で挑んでほしい。
(TechinsightJapan編集部 三浦ヨーコ)