writer : techinsight

冗談なのか?マジなのか?とにかくびっくりする企業『リトル東京』。

10月末日、日経新聞の朝刊に気になる見出しを発見した。「VB(ベンチャービジネス)向けに求人広告サイト」。今の時代、ベンチャー向けの求人サイトなど巷に溢れている。にも関わらず日経新聞が取り上げたこのサービス。どうにも気になった記者は、その企業「リトル東京」についての調査を開始した。

ホームページを発見し、広報担当の「シャケ女」なる女性に取材を試みる。広報担当がシャケ・・。くじけそうになる気持ちをこらえ、まずは当たり障りなく会社の事業内容から聞いてみた。

「ウェブメディアの企画、製作、運営ですね。一番力を入れているのはベンチャー支援です、“@ベンチャー社員”というベンチャー向けの採用課金型求人広告サイトを運営しています。」(広報担当:シャケ女さん)

うーん。これだけでは、日経新聞が取り上げた理由がはっきり言って分からない。
するとシャケ女さんの口から思わぬ言葉が飛び出した。
「“@ベンチャー社員”は基本的にまったく営利を追求していないのです。」

利益を求めない?このご時世そんな話はないでしょう?

「いえ本当ですよ。あくまでもベンチャー企業支援が目的ですから。自分たちの営利が目的ではないのです。」

いぶかしがる記者をよそにシャケ女女史は続ける。
「11月末日までですが、“@ベンチャー社員”で転職活動を行い、掲載企業への入社が決定し、実際に勤務を開始した人全員に、最大で14万円の転職支援金をプレゼントするのですよ。」

14万?!仕事が決まってさらに14万円をもらえる?
「はい。転職活動中って、決まった収入がないだけじゃない。普段の生活費のほかに、面接のための交通費、スーツやシャツ、靴や靴下を購入したり、床屋にいったり。予想以上にお金がかかるものなのです。そういったいわゆる支度金に当ててもらいたいという思いから提案しています。」

なるほど。たしかにそれは相当うれしいプレゼントだ。

基本的に“@ベンチャー社員”は、初期費用や広告掲載費用等が無料の採用課金型の求人広告サイトだ。企業側は、実際に採用者が働き始めたら、広告費を“@ベンチャー社員”に支払う。その費用は通常採用者1人に付き15万円。つまり、11月中に“@ベンチャー社員”で、企業と人材が見事結ばれても、“@ベンチャー社員”にはほとんど利益はない。しかも11月中はこの採用費用が7万5,000円となる。つまり、採用が決まり、人が働き出せば“@ベンチャー社員”は、採用者一人あたり6万円以上の赤字を出すわけだ。

それでもキャンペーンを行うわけは?
「うーん。本当に利益を追求してないとしか言いようが。あえて言うなら、少しでもベンチャー企業のお役に立てればいいと思っています。」
笑顔で語り続けるシャケ女女史。彼女の言葉にうそはなさそうだ。

最後に“@ベンチャー社員”ひいてはリトル東京の“1年後”の姿について聞いてみた。
「何にでも楽しく挑戦したいです。あと、もっとふざけた会社にもなりたいですね。」
たしかにふざけている??かも。
では10年後の姿は?
「10年後は発展的意味で会社がないかも。みんなで農業でもやっているかしら(笑)」

なんだか最後までシャケ女女史にはぐらかされてしまったような今日の取材。

世知辛いこのご時世、「他人のために」ここまでできる企業があるとは。しかし、この日の彼女の口調からは強い自信と裏づけが感じられた。
ちなみに、日経新聞に掲載されたきっかけもシャケ女女史が日経社に送ったプレスリリースだったという。毎日数え切れないほどのリリースを受け取る記者の目に留まるキラリと光る“何か”がやはりこの会社にはあるのかもしれない。「リトル東京」の心意気をちょっぴり信じてみたくなった記者であった。
(TechinsightJapan編集部 Emma Chu)