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【名盤クロニクル】ハービー・ハンコック「ザ・ニュー・スタンダード」

(画像提供:Amazon.co.jp)
(ジャンル:ジャズ)
ジャズの世界は、とかくスタンダードナンバーが好きだ。スタンダードといっても、要するに「定番曲」のことなのだが、問題はそのほとんどが1950年代のジャズ黄金期そしてロック勃興前に作られた曲ばかりだということだ。

伝統を継承することに問題はないが、いわゆる「スタンダードヒット曲」と呼ばれる人気曲ばかりを集めてアルバムを作ってしまう傾向が大きい。売るためには仕方がないとはいえ、毎度同じ曲ばかりというのでは些か脳がない。そこで御大ハービー・ハンコックがポップチューンの中で定番となっている曲をセレクトして制作したアルバムが「ニュースタンダード」である。

特に日本のジャズファンに顕著だが、定番のスタンダードヒット曲をこれまた定番通りの編成とアレンジで演奏し、あとはアドリブの技を競い合うというスタイルが高級とされ、8ビートで演奏したり、エレクトリックキーボードが伴奏を付けていたりする演奏は一段格が下がるとされる。

しかし、御大ハービーは「この曲をこのアレンジで」という、現在のポップミュージックの主流である、アレンジを重視したバージョンで聴かせているのが、この「ニュー・スタンダード」である。

ビートルズ、サイモン&ガーファンクル、プリンス、ベイビーフェイス、シャーデー等のポップ・ナンバーを1曲ごとに異なったアレンジで聴かせている。

しかも、きっちりジャズという伝統音楽のフォーマットからは逸脱しない上質な内容だ。
「そういうのはスタンダードではなくてカバーというのでは?」という意見もあるだろうが、既成の枠組みにとらわれずに、素晴らしい楽曲をジャズというフォーマットで演奏しようという、その姿勢自体が「ニュー・スタンダード」なのである。

(収録曲)
1. ニューヨーク・ミニット
2. マーシー・ストリート
3. ノルウェーの森
4. ホエン・キャン・アイ・シー・ユー
5. バッド・ガール
6. ストロンガー・ザン・プライド
7. スカボロ・フェア
8. シーヴス・イン・ザ・テンプル
9. オール・アポロジーズ
10. マンハッタン
11. ユア・ゴールド・ティースII
(TechinsightJapan編集部 真田裕一)