writer : techinsight

【名盤クロニクル】天満敦子「祈り」


(画像提供:Amazon.co.jp)
(ジャンル:クラシック)
ヴァイオリンとオルガンのデュオにより、深い祈りの心を表現した名作品集である。クラシックというジャンルでは、いわゆる「教会音楽」としての祈りの音楽は非常にたくさん存在するが、世俗曲や小品の演奏で、これほど高貴で慎ましい祈りを表現した作品は大変珍しい。

天満敦子のヴァイオリンは、人によって好き嫌いがはっきり出る非常に個性的な音である。たとえばバッハの「無伴奏ヴァイオリンのためのソナタとパルティータ」の録音に関しても、「あまりにも節回しが演歌的」と言って嫌う人もいれば、「非常に個性的で深い調べ」と言って好む人もいる。

そうした天満敦子のヴァイオリンの強烈な個性は、ほとんどのヴァイオリニストが優しい表現を好む「小曲」に関しても遺憾なく発揮され、情念がほとばしるような重い演奏になりがちだ。

ところが、この天満敦子の濃くて重たいヴァイオリンを優しく受け止めてくれたのがオルガンという楽器だったのである。オルガンという楽器自体、古くから教会音楽の伴奏に使われてきた経緯もあって、神聖な響きを持っている。

この両者の邂逅により、非常に深い祈りの心が表現された奇跡的な名盤である。
祈りと願掛けは同じではない。祈りは神仏との対話であるとともに、自己の内面との対話でもある。
このアルバムは、クラシック小曲という素材をもとに、悔悟や憧れ、そして許しの心までも表現しきった名盤として長く愛聴されるであろう。

(収録曲)

1. 鳥の歌(カタロニア民謡/カザルス編)
2. アヴェ・マリア(カッチーニ/和田薫編)
3. 主よ,人の望みの喜びを(バッハ)
4. アヴェ・マリア(バッハ/グノー)
5. オンブラ・マイ・フ(ラルゴ)(ヘンデル)
6. アダージョ(アルビノーニ/ジャゾット)
7. アリオーソ(バッハ)
8. 夢のあとに(フォーレ)
9. ヴォカリーズ(ラフマニノフ)
10. アメイジング・グレイス(黒人霊歌/和田薫編)
11. 祈り~「ユダヤ人の生活のスケッチ」より~(ブロッホ)
12. 望郷のバラード(オルガン伴奏版)(ポルムベスク)
(TechinsightJapan編集部 真田裕一)