writer : techinsight

【パソコン快適活用術】(温故知新)端末選びはライフスタイルの問題

2008年後半から2009年前半にかけて、PC業界の救世主となったネットブックの売り上げシェアは、ニーズが一巡したことで、ほぼ頭打ちになった模様だが、単にモバイルPCとしての功績だけではなく、低価格PCというジャンルを開拓した功績が大きいだろう。

これからのPC選びは、むしろライフスタイルの問題であろうと考えられる。というのも、ネットブックとよく似た製品が、90年代後半にいくつか存在したからである。

2つほど紹介しよう。ひとつはNECのモバイルギアという製品で、軽量かつ長時間バッテリーと16.5mmピッチの大型のキーボードを搭載しているのが特徴であった。このサイズのキーボードを備えた機種として他に、日立製作所のPERSONAなどがある。

ノートパソコンが30万円以上という時代に、5万円程度で購入でき、それまでリュックに重いノートPCを入れて持ち運び外出先でメールを書いていたユーザーは、思わぬ低価格端末の登場に快哉を叫んだものであった。

もうひとつは、東芝のリブレットという、これは今売られているソニーのVAIO TypePと同じくらいの大きさを持つWindows95搭載ノートPCであった。モバイルギアがハンドヘルドPCというジャンルで括られるのに対して、リブレットは超小型ノートPCであり、現在のネットブックの祖先とも言えるものであった。難点は価格が20万円弱と決して安くなかったことにより、熱心なパソコンマニア以外にはあまり訴求しなかったことである。

そして、電子手帳から発展したPDAというジャンルの端末も一時流行したが、いずれも携帯電話の高機能化(あるいはPDA化とも言う)によって、ほぼ駆逐されてしまった。

現在、ネットブックが普及し、iPhoneのようなスマートフォンが流行しているわけだが、90年代後半を知るユーザーは、「PDAの軛(くびき)」として猜疑的な目で見ていることも多い。

PDAやハンドヘルドPCが消えていったのは、携帯電話の進化という理由のほかに、それらを使ったスタイリッシュな生活が提案されなかったという理由が大きい。「軽い」「安い」「長時間バッテリー」というだけでは、デジモノマニアのオモチャとして愛用される以上の発展は見込めない。

バッグやポケットからサッと取り出して、片手でメールを書いたり、ウェブをチェックしたりする、現在のケータイ文化に対抗するのは、並大抵のことではない。

平日は会社と自宅の往復しかしないユーザーにとっては、ネットブックもスマートフォンもおそらく必要ないだろう。自宅に従来型の据え置き型PCが1台あればよい。外出や出張の多いユーザーが日常的なネット利用をするのに、スマートフォンとネットブックと軽量ノートPCのどれを買うかについて、それぞれのライフスタイルに応じて決めていく必要があり、その意味で中上級PCユーザーは、初心者に対して十分なアドバイスをすることが推奨されよう。
(TechinsightJapan編集部 真田裕一)