writer : techinsight

【名盤クロニクル】ジョニ・ミッチェル「Both Sides now」

(画像提供 Amazon.co.jp)

(ジャンル=基本ロック/フォーク)

いわゆるロック系のアーティストが年齢を重ねると、いわゆるロック誕生以前のクラシックポップあるいはジャズに取り組もうとすることが多い。
ジョニ・ミッチェルはしばしばジャズ系のミュージシャンを迎えて音楽を制作しているが、今回紹介するのはオーケストラをバックにしっとり歌うバラード集である。

バラードというのは、今の視点での便宜上の表現であって、ビートミュージックが主流になる以前のポップは、とりあえずバラードと呼んでおいてもあながち間違いではないだろう。

全編ブルーなムードが漂う極上のクラシックポップである。ジョニ・ミッチェルについては、初期のフォーク的なイメージを求める人と、多彩なアーティスト(画家でもある)としての才能の表現を期待する人がいるが、ミュージシャンを堪能する醍醐味は、「次は何をやってくれるかな?」「この路線の続編出ないかな?」と次々に期待が膨らむことにあるのではないだろうか。

還暦を超しても、なおかつ創造意欲旺盛なジョニ・ミッチェルの傑作の一つである。ちなみに邦題は「青春の光と影」になっているが、多分に昔からのジョニ・ミッチェル ファンに配慮したものであろう。「ボス・サイズ・ナウ」と呼んだ方が雰囲気が出るのではあるまいか。

月並みだが、深夜一人でウィスキーを傾けつつ、昔のことを振り返ってちょっとした感傷に浸るには、最適の音楽である。若い世代のリスナーには「大人のムード」を演出するのにもよいだろう。
選曲もすばらしい。
ジャズヴォーカルの世界でよくありがちな、日本企画のアルバムだと「マイ・ファニー・ヴァレンタイン」とか「バードランドの子守歌」といった一種の懐メロ集になってしまうところだが、ジョニのこの選曲は、コアなヴォーカルファン、トーチソング(センチなバラード)の愛好家にも十分訴求する内容となっている。

(曲目リスト)
1. You’re My Thrill
2. At Last
3. Comes Love
4. You’ve Changed
5. Answer Me, My Love
6. Case of You
7. Don’t Go to Strangers
8. Sometimes I’m Happy
9. Don’t Worry ‘Bout Me
10. Stormy Weather
11. I Wish I Were in Love Again
12. Both Sides, Now [Version]
(TechinsightJapan編集部 真田裕一)