Googleが満を持してアナウンスした、ChromeOSがネットブック用途をメインに提供されるという話題が踊ったのは先月のことであった。その実態はまだ明らかにされていないが、「無償である」「オープンソースである」そして「セキュアである」という評判である。しかし、普及するかどうかと問われれば、少なくとも日本での普及は難しいであろう。
日本をはじめとした非西欧文化圏においては、文字変換のための言語プロセッサを搭載しなければならず、これが無償で提供される可能性は低い。
ジャストシステムのATOKを搭載することは可能であろうが、ライセンスコストが上乗せされることになる。多くのLinuxで標準搭載されている無償のSCIM/Anthyでは、簡単なメール書きには使えるだろうが、ビジネス用途やライティング用途には耐えない。
OSライセンスに最初から日本語変換エンジンが含まれているWindowsを搭載した方が無難である。
そもそも、「無償である」「オープンソースである」セキュアである」というフレコミは、2000年前後のLinuxブームの頃に喧伝されていた言葉である。しかし、クライアント分野ではWindowsやMacOSを凌駕するほど普及したわけでもはない
OSの使命は、単にハードウェアの差異を吸収して、ユーザー親和性の高いGUIを提供するだけではない。初心者からベテランユーザーに至るまで「楽しく使えて便利な」文化が存在していなければ、普及はしないのだ。
もちろん、かつてのLinuxにも文化は存在するが、「ユーザーグループが不親切」「怖い」「いきなりわけのわからない呪文(コマンドなどのこと)を言われて泣きそうになった」と、初心者にはさんざんな評判である。
ChormeOSが、かつてのデスクトップLinuxやBeOSの轍を踏みたくなければ、さまざまな意味で「あこがれのOS」になるべく、「文化」の醸成に努めるべきである。
マニアックな「文化」やエンジニアの「文化」ではダメである。「無料でセキュア」なこと以外にメリットがないOSならば誰も使わない。
具体的には、エンジニアと同じぐらいにユーザーグループを重視し、初心者ユーザーの取り込みに尽力し、ChromeOSのブランディングも行い、「ChromeOSを使う楽しみ」を掘り出す必要がある。
現在、スマートフォン分野で闘いが始まっているAndroidについても同様だが、ChromeOSが多くの一般ユーザーにとって「あこがれのOS」になれば、自然とユーザー及びエンジニアが集結し、スパイラル的にOSの人気と完成度は高まっていくに違いない。
(TechinsightJapan編集部 真田裕一)