writer : techinsight

【親方日の丸な人々】視察という名の物見遊山

その昔、出張旅費は出張のためのものではなかった。カラ出張が常態化していて、箇所別の裏金捻出に使われていたという事件はしばしば新聞で報道された。

現在は、さすがにそういうことはなく、きちんと出張に行くようになったが、それはそれで困った事態が起きる。ひとつは、視察という物見遊山の出張。もうひとつは帰省目的で週末に開催される会議出席のための出張である。

視察と言えば聞こえがいいが、真の意味で視察と言えるのは、災害現場の視察だけである。具体的な公共施設損壊の規模や地域住民の窮状を目で見なければ、災害復旧予算は出せない。

しかし、それ以外のほとんどの視察は物見遊山なのだ。

たとえば、どこかの自治体で優れた施設を築造したとする。さっそく他の自治体のお役人が視察と称して見に行くわけだが、実際に行くのはある程度の職位以上の人間だけである。

末端公務員は雑事全般で忙しいので、主張に行くヒマがないというのもあるが、概して「楽しいことは上が独り占め」というケチな年功序列の結果である。

そして、視察から帰ってきた職員は、報告に当たっては「いやー立派だったねぇ」「すごいねえ」という感想を言うだけだ。
小学生の社会科見学以下の感想を言わせるために、公費で出張に行かせているのである。

マジメに視察をしようと思ったら、各方面の実務担当者を交えて1週間程度はかけて、じっくり見学し、行き先の担当官と事務レベルでの詳細について十分な会合を持ち、資料を持ち帰って検討すべきなのだ。

続いて、この連載でも以前に紹介したが、首都圏または県庁所在地で週末に開催される会議の多くは、地方へ単身赴任している職員の帰省のために開催されている。本来自費で帰省すべきところを、主張旅費で帰省できるという仕組みだ。

視察や会議のための出張は遊びではない。会議は必要最小限の開催とし、できるだけネット会議/テレビ会議などで済むよう省庁内のインフラ整備を進めるとともに、視察の出張は本当に視察すべき人間が行けるよう、予算面でのメリハリを付けるべきであろう。
(TechinsightJapan編集部 石桁寛二)