writer : techinsight

【ドラマの女王】“実話”なのに“ウソ”くさい。サクセス・ストーリー『帝王』。

今回の【ドラマの女王】は『帝王』(塚本高史主演 TBS系)。「女帝」や「夜王」、「嬢王」など多くの作品が劇画化やドラマ化されている倉科遼による「夜の街に生きる人々」を描いた、いわゆる“ネオン街モノ”。今回の『帝王』は、キャバクラチェーン店で成功した、輝咲翔という実在の人物をモデルとしたサクセスストーリー。金もコネも学歴もなく、実業家として海外進出まで果たす程の成功を納めたという話だが、ドラマを見る限り、何かウソくさい。「水商売」ってそう簡単に成功できるのか?。

友人の彼女から金を巻き上げたホストと「同じ土俵に立つ。」事を宣言し、咲輝凌として「ムーン・リバー」のホストになった坂木了(塚本高史)。ライバルのナンバー1ホスト・連城透(山田悠介D-BOYS)の執拗なイジメにも耐え、常連客の沙也加(長澤奈央)ら女性たちの指名を勝ち取っていく。ある時、沙也加の実家のスナックを手伝う凌に嫉妬した女性客が、連城のウソに騙され凌から離れて行こうとしたが、持ち前の機転と誠実さで思いとどませる。
今の所、まだホストクラブの内情を明かしているところで、“女性を働かせる”キャバクラ店に主人公・凌が関わる経緯は見えない。

不況においても、多くの店で大金が使われるネオン街。多くの人は、「水商売」の実態を知らないから、夜の世界に憧れ、『帝王』のような倉科遼氏の手によって脚色されたウォーター・ビジネスを扱った作品がヒットするのであろう。しかし、法外な値段で酒を売り、しつこい営業や擬似恋愛で客をだます、それがこの世界のやり方だ。どんなに美しく見繕っても、ホストやキャバクラの儲け方は汚い。

そんな汚い世界に、「掃き溜めに鶴」のような心で臨んだ咲輝凌。自分と同じ酒が飲めないお客を大事にし、オフは常連客の引越しの手伝いを買って出る。Jリーガーをあきらめ、一旦は工場に就職し、トラックの運転手になるも友人を事故で失った若い青年が、いままでの空虚感を埋めるように、夢やサービス精神に目覚めていく様は気持ちいい。表面的にはハデな顔でも、内面は誠実でやさしい魅力ある男・咲輝凌を塚本高史がさわやかに演じる。袴田吉彦など、坂木了時代の頃の人間関係が今後ドラマにどう絡んでくるかも興味深い。この種のドラマとしては他に無いほのぼのさを感じる。

近年、一般企業の就職がままならない若者たちの多くが凌のようにウォーター・ビジネスに流れていく。今や10代、20代の若い女性の憧れの職業に、“キャバクラ嬢”が上がる。彼女たちは、着飾って男性に酒をつぎ、チヤホヤされながら会話をするだけで永遠に大金が手に入ると思っているが、それは危険な考えだ。
キャバクラ嬢のピークは20代前半。年をとって、うまくカネのある男と結婚できればいいが、他にカネを稼ぐすべ持たないキャバ嬢の多くが風俗に流れていき、客で来たホストに貢ぎ始める。ネオン街にはそんなダークなサイクルもあるのだそうだ。
(TechinsightJapan編集部 クリスタルたまき)