writer : techinsight

【どっちに乗りたいCar!?】比較される宿命。新型プリウスvsインサイト

トヨタから新型プリウスが発表されてから今日まで、恐るべきペースで受注を上げている。その反面、2月に発表されたホンダ、インサイトはプリウスの勢いに圧倒される形となった。プリウスvsインサイトこれまで発表前、発表後とあらゆるマスコミがあらゆる角度から比較をしている。しかしそれを承知で、独断と偏見で勝敗を分けたい。

これまで数回にわたって、ある車にスポットを当てて比較し、結果的に勝敗を分けることを目的としてきたが、今回に関してはそれを目的とすること自体が、そもそもの間違いではないかと思う。それを言ってしまってはこのシリーズが元も子もなくなってしまうのだが。逆にその意味を両車の比較の中から説明していきたい。

まずはじめに、勝敗を分けるとすれば、完全にプリウスの勝ちである。結果だけ見れば、この判定は日本全国の消費者やマスコミが下した判定とまったく変わらない。

しかし、インサイトが負けているとは思わない。戦い方が失敗だったように思う。小さい5ナンバーのインサイトが、大きい3ナンバーのプリウスに真正面から体当たりして当たり負けしたというのが実感である。

格闘技では、体重別で階級が分かれていることは当たり前である。インサイトは自分のほうが小さく自分が不利な状態にもかかわらず、プリウスに勝負を挑んだ。小さい者には小さいなりの戦い方があるものだ。

誰が見てもわかるのは、まずスタイルである。2代目プリウスを真似したかのようなインサイトのプロポーションは、「何で?」と言う声があちらこちらから聞こえてきた。そしてその時点で、3代目プリウスの大まかな情報はすでに流れており、その外観もすでに公開されていた。公開された外観のプロポーションは、2代目プリウスの流れを強く受けており誰が見てもプリウスとわかるデザインであった。それにもかかわらず、同じようなデザインでインサイトは発表され、事前の情報通り3代目プリウスもまた同じようなデザインで発表された。まずここにそもそもの間違いがあり、必要以上に比較される原因があるように思う。あれだけ外観が似ていれば比較したくなるのは当然ではないか?

インサイトは1.3リットルエンジン+モーターで1.5~1.8リットルエンジンクラスの動力性能を持つ。方やプリウスはモーター+1.8リットルエンジンで2.4リットルエンジンに匹敵する動力性能を誇る。この二台、外観は似ていても、中身は比較する対象ではない。わかりやすくトヨタの車で置き換えよう。1.5リットルエンジンを搭載するカローラと2.4リットルエンジンを搭載するカムリ、この二台をどう比較しようというのか?エンジン、大きさ、質感、燃費などそれぞれの特性があり、一長一短である。

そして、燃費においても当然ながら比較される。「じゃあ、燃費はどっちがいいの?」と・・・。10.5モードで、インサイトが30km/リットルと公表しているのに対し、プリウスは38km/リットルである。プリウスの圧勝である!インサイトは、発表前から、新型プリウスに燃費では勝てないのはわかっていたはずである。なぜなら、システムそのものの構造の違いである。前途したがインサイトは「1.3リットルエンジン+モーター」でプリウスは「モーター+1.8リットルエンジン」である。この違いはどこなのか。エンジンとモーターの順番が逆なのがわかると思う。これは、ホンダはエンジンが基本で、モーターが補助的な役割をしている。そのため、基本的に常にエンジンが作動しているのである。それに対しプリウスはモーターが基本でエンジンが補助となっているため、走行中でもエンジン停止時間が長い。この根本的な違いがあるため、燃費はプリウスが当然よいのである。

また、プリウスは、インサイトよりも後発のため、価格も当初は230万円台からと報じられていたが、205万円からと大幅に安くインサイトを意識した価格設定をしてきた。

これらの点から見ても、比較するのは間違っているといいながらも、比較してしまえばプリウスの勝ちと言わざるを得ない。

インサイトは、自ら比較される土俵に立ってしまった。燃費、居住区間、スタイルなど比較されるのは仕方ないとして、ホンダ独自の差別化をもっと図るべきではなっかただろうか?たとえば、ホンダには既に量産されるハイブリッドモデルがある。「シビック ハイブリッド」それを知っている消費者がどれだけいるか。それがあるのだから、インサイトはプリウスと瓜二つのデザインでなく、思い切ってステーションワゴンなどの形状にして発表するなど、ホンダの得意とする奇策があってもよかった気がする。

同じハイブリッドと名乗りながらも、根本的な構造の違いがあるため、ホンダは独自の道を進み、燃費はトヨタのほうがいいけど、こっちが欲しいといわれる車造りが不可欠だ。ホンダの手腕に期待したい。
(TechinsightJapan編集部 ”自動車魂世界一”car journalist 木下)